「あんさんでせうか。あちきの、夜を買いたいと仰ったのは。」
「あんさんも物好きですこと。あちきが、そこいらの遊女と違って可愛げないのを存じてここへ?」
「けちなことは言いませんな。はよお帰りなんし。」
「仕方のない人。ようざんす。なら、あちきと一勝負、いたしませう。」
「簡単さ。あんさんは、」
「丁か、半かを選ぶだけ。簡単でありんす。」
「あんさんが見事当てましたら、一夜と言わず、あちきの間夫になるのを受け入れませう。」
「けれど、もし…。あんさんが当てられなかった場合、そうさねぇ…。」
「文字通りの持ち金、全、てあちきにくだしゃんせ。」
「あら、あちきの一生を賭けているのだから、あんさんだって、それ相応のモノを賭けてもらわんと。」
「ここは、一夜限りの夢を与えるだけではなく、奪っていく場所。」
「一度決めたのなら、」
「腹斬ってでも押しとおしゃんせ。」
「さぁ、丁か半か、お決めなさい。」
「お決めになりましたね。」
「あら、いやだ。うふふ。」
「見んなし。これが賭けの結果。」
「うふふふ。楽しい遊び。でしたね。お猿さん。」
06/20 photo(twitter:@s_kasoiso)敬称略
Comments