「これは、一体、どういう事かしら?」
「誤解だって大和ちゃ~ん。」
夜、ホテル、男女の二人。
女が男の上に跨っているなど考えられることは色々とあるものの、
今回はそういった話ではないようで。男はなすがままベッドの上に寝そべっていた。
「仕事だから着いて来いって着いてきてみればどういうことなの?」
「仕事は間違っていないよ~。カジノ仲間の所に行ってきたじゃないか。」
「問題はそこじゃないの。今、この部屋の事を私は聞いているのよ。分かってる?」
彼女の言い分としては部屋に何故ベッドが一つしかないと言う所だろうか。
兄妹仲良く同じベッドで寝るには、二人共いささか年を取っている。
「間違ってしまったんだよ。大和ちゃん許して?」
「…。」
本当は分かっててこの部屋をとったんじゃないかと思うものの、
いつもの、仕事での兄とは違った物言いに些か気が抜ける。
長年、兄妹として付き合って来たものの、最近は特に顕著になっているような。
元より、他と比べ少し…いやかなり妹を大事にしている、というより妹を好きすぎている兄としての行動が目に余るような気がしてならなかった。
「私が簡単に許すとでも?」
「や、大和ちゃん?」
急に自分が着ているベストの釦を外し始めた妹の行動に兄は少し上ずった声を出さすにいられなかった。
するりと腰を撫でられ距離を詰められる。
「簡単に許すとでも…って言ったでしょう。」
「だ、ダメだよ大和ちゃん。」
「あら、何がダメなのかしら。」
ネクタイを軽く引っ張られ自然と視線が上に上がる。
「こういう事をされたいんじゃなかったのかしら。」
「こういう…事って。」
「さぁ?」
「~~~!大和ちゃん!」
馬乗りされていようどそこは男女の力の差。
身体をいとも簡単に起されそれぐらいの力で肩を押されてしまえば、呆気なく立場が逆となる。
「兄といえど俺だって男なんだから、そんな事を気軽にしちゃダメ。大和ちゃん女の子なんだよ?」
天井と、兄の白い盤面で視界が埋まる。
背に感じるベッドの感触に妹は、あぁ、押し倒されたのかと冷静になって、
バンっと鈍い音が部屋に響く。
「女だからって、妹を舐めすぎじゃなくって?愚兄め。」
ぺチンという軽く叩いた音でもなく、コンという軽く小突く音でもなく、やや力の入った平手打ちが兄の盤面に直撃する。
あっという間の立場逆転劇は幕を閉じ、兄の背中にヒールが食い込む。
「酷いや…大和ちゃん。いい雰囲気だったのに。」
「フェミニストの名が泣くわよ。」
「大和ちゃんだって…、あんなに色気ふりまいちゃダメ!お兄ちゃん怒るよ!」
「おだまり。」
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