お盆休みも今日で終わり。この三日間賑やかだったぼくの家も今日で少しだけ静かになる。
「皆帰っちゃうのにここにいて平気?」
今日もぼくはひまわりさんに会いに来ていた。
正直、皆が帰るのは少し寂しいけど、ぼくはひまわりさんといる方が楽しいからいいんだと答えた。
「そっかー。嬉しいなそう言ってくれて。」
くすくす笑うひまわりさんだけど、なんだろう…今日は少し元気がない様に見えた。
僕の気のせいかもしれないけど。
どうしたの?元気ないね。
「そうねぇ・・もう少しで夏も終わってしまうから…。そしたらこの子達も枯れてまた夏が来るまで眠りにつくわ。」
だから少し寂しいの。と答えたひまわりさん。そう言えば、夏が終わったらひまわりさんは一人ぼっちになってしまうのだろうか。
ひまわりさんは夏が終わったらどこに行くの?
「夏が終わったら…かぁ…。」
少し考える素振りを見せたひまわりさん。その時、ぼくとひまわりさんの間にさぁと風が吹き込んできた。
暑い夏の日の癖に、何故かその風のせいで僕は身震いをした。さっきまで晴間が見えていたはずなのに少し雲が覆ってきたようだ。
「内緒。」
しぃとひまわりさんが人さし指を見せるとさっきまで雲が覆っていた空が急に晴れだしてまわりのひまわりが僕とひまわりさんを見つめだした。
「あら、晴れてきた。」
さっきまで身体に纏っていた冷たい風がなくなり、今は熱いぐらいになった。
「種を植えられ、長い年月をかけて咲き誇った花はいずれ枯れ朽ちていく。そして忘れ去られてしまう。」
なんでそんな事をいうの。
悲しい声でひまわりさんが喋る。こんな姿、この数日間で一度も見たことなかった。
こんな悲しそうなひまわりさんは見たことがない。ぼくが知らないひまわりさん。
「私もまた忘れられちゃうから。」
僕は忘れないよ絶対!!
ついムキになって大声が出てしまった。びっくりするひまわりさんだけど僕は開いた口が閉じない。
ずっとずっと、忘れないよ!ひまわりさんの事!だからひまわりさんも忘れないで!忘れようとしないで!
駄々っ子のように叫び続ける僕にひまわりさんは唖然としながらも、僕に目線を合わせてくれた。
近くなった距離にどきどきと心臓が加速していっていくのが分かった。
「…じゃあ約束。毎年、夏の、この四日間。
私はここから離れない。ここにいるときはあなただけを見つめててあげる。私が麦わら君を見つめている間は、君も私を忘れないでね?」
これは、
あの夏、
ひまわり畑で出会った、
ひまわりのお姉さんと、
幼かったぼくとの、
夏の約束だ。
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